米国、メキシコ産トマトへの「AD停止協定」離脱へ メキシコ政府・業界団体は猛反発
2025年7月18日、日本貿易振興機構（JETRO）から、米国がメキシコ産トマトに対する「アンチ・ダンピング（AD）停止協定」から離脱する意向を示したことに対し、メキシコ政府および業界団体が強く反発しているというニュースが報じられました。これは、両国間の貿易関係、特に農業分野において、新たな波紋を広げる可能性のある重要な動きです。
なぜ「AD停止協定」が結ばれていたのか？
そもそも、なぜ米国とメキシコの間でこのような協定が結ばれていたのでしょうか。それは、過去にメキシコ産トマトが、不当に低い価格、つまり「ダンピング（不当廉売）」価格で米国市場に流入し、米国のトマト農家が大きな損害を受けていたという経緯があるからです。
この問題に対処するため、両国は1996年に「トマトに関するアンチ・ダンピング（AD）協定」を締結しました。この協定は、メキシコ産トマトの米国への輸出価格を一定の基準（「価格協定」とも呼ばれます）以上に保つことで、ダンピングによる米国のトマト産業への影響を緩和することを目的としていました。この協定のおかげで、長らくメキシコ産トマトの米国への輸入は比較的安定しており、両国間のトマト貿易は円滑に進んできました。
米国の離脱表明とその背景
今回、米国がこの協定から離脱する意向を示した背景には、いくつかの要因が考えられます。
- 米国内のトマト産業からの圧力: 米国内のトマト生産者団体は、メキシコ産トマトの価格が依然として米国産トマトの生産コストを十分にカバーできていないと主張し、より厳しい規制を求めていました。協定の離脱は、米国がより直接的に関税などの措置を講じるための布石と見られています。
- 経済状況の変化: 世界経済の変動やインフレなどの影響で、米国国内の生産コストも上昇しており、メキシコ産トマトとの価格競争がさらに厳しくなっているとの見方もあります。
- 通商政策の見直し: バイデン政権下で、米国の通商政策全体が見直されており、過去の協定についてもその有効性や公平性が再検討されている可能性があります。
メキシコ政府・業界団体の強い反発
この米国の離脱表明に対し、メキシコ政府およびトマト生産者団体は、強い懸念と反発を示しています。
- メキシコ経済への打撃: メキシコにとって、米国は最大のトマト輸出先です。協定が破棄され、米国が一方的に高関税などを課すことになれば、メキシコ国内のトマト農家や関連産業に深刻な経済的打撃を与えることになります。
- 相互主義の原則への違反: メキシコ政府は、長年にわたり協定を守ってきたにもかかわらず、一方的に協定から離脱することは、国際貿易における相互主義の原則に反すると主張しています。
- 交渉の再開を求める声: メキシコ側は、協定を維持した上での問題解決や、新たな条件での交渉を求めており、米国の唐突な離脱表明に戸惑いを隠せない様子です。
今後の展望と懸念
今回の米国によるAD停止協定離脱の動きは、米墨間の貿易関係、特に農業分野において、不確実性を高めるものです。
- 新たな貿易摩擦の可能性: 米国がAD課徴金や関税などの措置を実際に講じることになれば、両国間で新たな貿易摩擦が生じる可能性があります。これは、単にトマトだけでなく、他の農産物や品目にも影響を及ぼすことも考えられます。
- サプライチェーンへの影響: 米国市場へのメキシコ産トマトの供給が不安定になることで、米国国内の食品流通や消費者のトマトの入手にも影響が出る可能性があります。
- 国際貿易への影響: 世界的な保護主義の傾向が強まる中で、このような動きは他の国々にも影響を与え、国際貿易のルールや安定性に対する懸念を高める可能性があります。
メキシコ政府は、自国の産業と輸出を守るために、あらゆる手段を講じる姿勢を示しており、今後の米国の動向とメキシコ政府の対応が注目されます。両国が対話を通じて、互恵的な解決策を見出すことが、今後の国際貿易の安定にとって重要となるでしょう。
米国によるメキシコ産トマトへのAD停止協定離脱に、メキシコ政府・業界団体が反発
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